シネフィルとは呼べなくて。

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『マスカレード・ホテル』感想 キムタクのホテルマン体験奮闘記

『マスカレード・ホテル』

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55点 / 100点(満点中)

ひとこと・・・接客業って大変だよね…

 

あらすじ:都内で起こった3件の殺人事件。

すべての事件現場に残された不可解な数字の羅列から、事件は予告連続殺人として捜査が開始された。

警視庁捜査一課のエリート刑事・新田浩介(木村拓哉)は、その数字が次の犯行場所を示していることを解読し、ホテル・コルテシア東京が4番目の犯行場所であることを突き止める。

しかし犯人への手がかりは一切不明。

そこで警察はコルテシア東京での潜入層を決断し、新田がホテルのフロントクラークとして犯人を追うこととなる。

そして、彼の教育係に任命されたのはコルテシア東京の優秀なフロントクラーク・山崎尚美(長澤まさみ)。

次々と現れる素性の知れない宿泊客を前に、刑事として「犯人逮捕を第一優先」に掲げ、利用客の“仮面”を剥がそうとする新田と、ホテルマンとして「お客様の安全が第一優先」のポリシーから、利用客の“仮面”を守ろうとする尚美はまさに水と油。

お互いの立場の違いから幾度となく衝突する新田と尚美だったが、潜入捜査を進める中で、共にプロとしての価値観を理解しあうようになって行き、二人の間には次第に不思議な信頼関係が芽生えていく。

そんな中、事件は急展開を迎える。

追い込まれていく警察とホテル。

果たして仮面(マスカレード)を被った犯人の正体とは・・・。(公式サイトより)

masquerade-hotel.jp

www.youtube.com

 

 

もはや、映像化されていない作品の方が少ないのではないか。そんなことすら思わせてくれる作家・東野圭吾の実写化作品最新作です。公式サイトによくある原作者コメントも、もはや達人の域

しかも主演は木村拓哉。そして豪華絢爛なキャスト。東宝・フジテレビともにかなり勝負に出たと伝わってくる布陣ですね。(実際キムタクは番宣出まくってましたね…)

 

◎やっぱりスーパースター・木村拓哉

やはりこの映画の看板と言えるのは、主演・木村拓哉でしょう。

国民的アイドルグループであったSMAPの解散等、一騒動もあったようですが(この辺りはあまり詳しくないです…)解散後の彼らをテレビやネットで拝見する限りでは、何だか前よりも活き活きとしていて、そして今までにない新しい挑戦をしていることが印象的です。凡人からしてみたら、富も名声も全て手にしているのに、なおもまだ新たな挑戦をする姿はホント凄いな…と思うばかりです。

そして、その一人である木村拓哉(キムタク)も、明らかに以前のアイドル時代とは異なる活動が増えてきました。

ゲームの主演だったり、ネット配信番組だったり、昔じゃ絶対ありえなかったであろう活動が目立っています。

gyao.yahoo.co.jp

↑個人的好感度爆上げ回。あのキムタクがガストで食事を。(しかもガスト大絶賛)

 

それは、映画界にとっても同じで、SMAP解散後、キムタク主演映画は急増。しかも、出演した作品はどれも今までのイメージを覆すものでした。

wwws.warnerbros.co.jp

kensatsugawa-movie.jp

2本とも面白かったのですが、特に『検察側の罪人』はアイドル時代じゃ絶対ありえないような役柄で驚きました。そして何よりも大人の色気をまとっていて文句なしにカッコいいんですよね。

 

そして本作も初の刑事役、初の東野圭吾作品主演ということで、今までとは違うんだという雰囲気を感じ取れました。

また、今回も文句なしにカッコいい。冒頭で出てくる無精髭姿の刑事と身だしなみを整えたホテルマン姿。どちらもキマってました。スクリーンに出てくる度、華やかに映えるのです。コンビニコーヒー飲んでるだけで様になるって何事よ)

演技派俳優は数多くいれど、唯一無二のオーラを持つスター俳優は稀。そんなスター性のあるキムタクはやっぱり偉大だなと再確認できる映画でもあります。

「キムタクは何やってもキムタク」「もう昔のオーラはない」等という人もいるとは思いますが、やはり彼は今でも映画界における貴重なスターであり、俳優の名前だけで客を呼べる貴重な存在なんだと思います。

 

正直、昔のアイドル全盛時代のキムタクと今のキムタクどちらが好きか、と聞かれたら、迷わず後者と答えると思います。「アイドル」というキャリアは終わってしまいましたが、「俳優」としてのキャリアはこれから全盛期をむかえるかもしれない。そんな雰囲気すらあるような気がします。

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 意外と似合っていた(元)コンビ。小日向さんとの相棒ものも丸一本で見てみたいかも…

◎謎解き<豪華絢爛

キムタクの脇を固めるのは、何と言ってもとにかく豪華絢爛な共演陣。その殆どがホテルの客で、出番もほんの少し。しかしまあよくもここまで次々と有名な顔ばかり集められたもんだ。。(全然知らない俳優ばかりだったカメラを止めるなの時とは真逆だな)

また、バディ役の長澤まさみさんも良かったです。有望な若手フロントクラークで、お客様の前ではきっちりとした態度。でもキムタク演じる刑事・新田とは最初ソリが合わず凸凹コンビという感じもバッチリでした。最近はコメディ役も増えましたが、こういう上品な役の方が彼女の良さが出てる気がするけどなあ。

因みに、キムタクと二人のシーンは身長差ばかり気になってしまいましたが、自分だけでしょうか…?(多分身長は長澤まさみの方が高そう。ヒールなんて履いてしまうと尚更) 物理的に凸凹に見えないよう、撮り方随分苦労したんだろうなあという痕跡が見え隠れしたような、していないような…

 

ホテルのフロントのセットもまさに豪華の一言で、(本物ではないとは分かってたとしても)本当にホテルのフロントで撮影していたのではと錯覚してしまいます。もう一人の主役はこのホテルと言っても過言ではないぐらい。

そういえばこの映画みたいに入り口入ってすぐフロントっていうホテル滅多に見かけないですね。防犯上の理由なのかな?

因みに原作では、日本橋の「ロイヤルパークホテル」をモデルにして言えるそうで、映画とのコラボキャンペーンも行なっていますよ

 

キャスト、美術面では文句なしといった感じですが、ストーリー面ではどうか。ポスターにも「全員を疑え。犯人は、この中にいる。」と書いてあるように、謎解きサスペンスもの要素も強いのかと当初は思っていましたが、正直びっくりするぐらい薄かったような…

物語の前半なんて、肝心の事件の展開はほぼ進まず、豪華俳優が演じる多種多様なクレーマーぶりと、それをテキパキ解決する長澤まさみ、一緒に体験するキムタクという接客業&ホテルの仕事は大変だよムービーと化しており、あれ、今何見てるんだっけ?と考えてしまう始末。

犯人探しの面だけでいったら、もう何の捻りもない。次々とやってくる一癖二癖ある客の中でさえ、明らかに怪しすぎる客が一人混じっていたのだから。あまりにも怪しすぎてブラフかと思いましたが、特にそんなこともなかったので二重に驚いたという。。

犯人が仕掛けた連続殺人のトリック自体はなかなか興味深かっただけに、何だか勿体ない感は否めませんでした…

 

しかし、この映画に本当に謎解きを求めてくる観客も少ないと思うんです。観客が求めているのは、カッコいいキムタクと、豪華俳優陣が織りなすアンサンブル。そして豪華絢爛な高級ホテルの世界観。こちらの要素は完全に満たしているので、物足りなさは感じるけど、ニーズは満たしているよなあという感じ。

映画鑑賞料金で出した決して安くないお金の元は間違いなく取れてると言ってしまうと貧乏臭いですが、多分そんな感じです。

 

因みに本作、結構ヒットしているみたいですね。製作陣のかなり勝負に出た感はひしひしと感じていたので、結果が出て何よりです。本当に。

原作では「マスカレード・ホテル」の他に前日譚の「マスカレード・イブ」、続編の「マスカレード・ナイト」が刊行されているそうなので、ほぼ続編は確定でしょう

「次は是非、謎解き要素も増し増しでお願いしたい」とホテル・コルテシア東京のお客様満足度アンケートに書きたい気分ですね。(雑な締め方)

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+++以下、ネタバレ注意!+++

【ネタバレあり感想、ツッコミ】 

 

◎お客様至上主義の弊害

結局、犯人(松たか子)の目的は、「連続殺人犯に見せかける→実は単独の殺人に見せかける→実は全部じゃないけど、殺したい人間は一人じゃなかった」という三重仕掛けでした。ややこしいな。

殺したい人間のうち、一人はよくある怨恨でしたが、もう一人のターゲットであったホテルマンの山岸(長澤まさみ)は「お客様の要望通り、ストーカーを追い返した」ことに腹を立てた、ただの逆恨みだったとは。

お客様の要望にはなんでも応えるお客様至上主義の行き着いた先が、その割りを食らった人間に殺意を持たれるほど恨まれるというのはなんたる皮肉でしょうか。。

 

◎キムタクのホテルマンの成長ぶりたるや!

刑事だった新田(キムタク)が、潜入捜査の中で「英語ができる」という理由でフロントクラークの職に扮することを命令されます。といいつつ、劇中で英語を話したシーンなかったような…

最初は嫌々で教育係の山岸と衝突しつつ仕事をこなしていきますが、段々とホテルマンとしての成長が垣間見えるのが良かったですね。特に最後の犯人に捕まった山岸を探すシーン。急ぎつつも、通りかかった客には立ち止まって礼部屋に入るときはチャイム→ノックして確認してから入るという、ホテルマンとしての精神も忘れていない姿には感動しました。序盤の新田だったら絶対無我夢中で走ってただろうなあ。

そもそも、隠れていた犯人の部屋を特定できていたのが、山岸が今まで何回も丁寧に位置を直していたペイパーウェイトの位置のズレに気づいたから、というのも「これまでの経験の成果が出た」という感じで良いですよね…

何回も注意されていた「客ではなくお客様と呼ぶ」ことも、最終的には注意されるまでもなく自然と「お客様」と呼んでいたし、潜入捜査が終わってスーツを返すときも名残惜しそうにバッジの位置を直す演出もグッド。。

逆に、ホテルマンの山岸も段々と捜査に加担していくのも面白かったですね。疑うのが仕事の刑事と、信じるのが仕事のホテルマン、真逆のように見えて実は表裏一体なのかもしれませんね。

 

◎ホテルと言ったら群像劇。なのに…

上にも書きましたが、次々来る客の中で明らかに怪しすぎた片桐瑶子(松たか子)がそのまま犯人だったのがそのまますぎて逆にびっくりしました。

ホテルが舞台の作品の特徴は何と言っても群像劇。多種多様な人間が繰り広げる意外なドラマが醍醐味だと思うのですが、豪華キャストが演じたほとんどの客が事件とは無関係なのはがっかりでした。。いや、完全に事件とは関わっていないわけではなく、事件に繋がるヒントとなったり、犯人の仕掛けた罠もあったのですが、誰でもいいというかその人である必然性がないことにがっかりというか。

複雑な人間模様が群像劇の魅力なのに、この話は犯人とその周りの関係性が単純すぎるのがなあ。群像劇というより、「一人の犯人とその他大勢のハッタリ」という表現の方が正しいかも。大勢の人が仮面を被っても、その中には特に何もありませんでしたというオチじゃ…

せっかくホテルが舞台で豪華キャストなのに、なんだか勿体なさを感じてしまう始末。

 

しかしその中でも、ウェディングドレス姿の前田敦子の前にリアル旦那勝地涼を出させる演出は嫌いじゃなかったです。監督、確信犯(誤用)だな。

 

 

 

・連想した作品

THE 有頂天ホテル

THE 有頂天ホテル

 ホテルが舞台の群像劇。

 

ディパーテッド(字幕版)

ディパーテッド(字幕版)

 警察官が潜入捜査で真逆の職業になる繋がり(?)