『フォルトゥナの瞳』感想 どんな死神っぷりだよ
『フォルトゥナの瞳』
15点 / 100点(満点中)
ひとこと・・・この結末はイカンでしょ…
あらすじ:幼少期に飛行機事故で家族を失った【木山慎一郎】(神木隆之介)は、友人も恋人もなくただ仕事のみに生きてきた。しかしある日、「死を目前にした人間が透けて見える能力」―フォルトゥナの瞳―を持っていることに気づき、生活が一変してしまう。自分はなぜこんな力を持ってしまったのか―苦悩する日々の中、偶然入った携帯ショップで【桐生葵】(有村架純)という女性に出会う。明るく、自分に対し夢や自信を与えてくれる彼女に心惹かれていき、孤独だった慎一郎の人生に初めて彩りが生まれる。互いに惹かれ合い幸せな日々を過ごす2人。しかしそれもつかの間、突然葵の身体が透け始めてしまう・・・(TOHOシネマズ作品紹介ページより)
発言が何かと炎上しがちな百田尚樹原作の実写作品です。
百田尚樹の映画作品で一番よかったのは、やはり『永遠の0』ですかねえ。
当時試写で拝見したのですが、上映終了後、案内係のスタッフまで泣いてたのを思い出します(試写会のスタッフアルバイトは給料安い代わりに映画も観れる特典が付いてるケースが多いそうです)
『永遠の0』は何と言ってもラストシーンが好きですね。「お涙頂戴」と言われてもあれは泣いちゃうよ。。本当に衝撃的なシーンでした。
さて、本作『フォルトゥナの瞳』も、『永遠の0』レベルまでとはいかなくても、それなりに期待して鑑賞したのですが…
こちらは逆に、ラストシーンが本当に無理でした。感動どころか、ドン引きですわ…
ラストシーン以外はそれなりに好きなところもあったので、本当に残念な限りとしか言いようがない。。
◎人生は選択の連続
何だか酷評だけになってしまいそうなので、まず、良かったところを挙げていきましょう。
本作のメッセージ自体は良かったです。「人生は運命であらかじめ決まっているわけではなく、自分が選択して決める」ということは自分でも常々思っていることでしたし、「人は1日の中で9,000回何かを選択している」というセリフにも、確かに大小関わらず、常に何かを選択しながら生きているよなあとハッとすることがありました。
また、「人の運命を変えることは許されない」も確かにそうだよなあとは思わずにはいられませんでした。誰かの運命を変えると自分に代償が返ってくるという設定にも異論は一切ありません。
メッセージ、メッセージ自体は本当に良かったんだけど…
主演の神木隆之介&有村架純のコンビも良かったです。この二人、どこかで見覚えがあるなと思っていたら、『3月のライオン』で"血の繋がらない姉弟"役で既に共演済みだったんですね。
今回のシンプルな恋人役もいいですが、個人的には"何だかちょっとイケナイ匂いのする姉弟"の関係がハマりすぎてただけに、少し物足りなさも。
因みに話は逸れますが、今回の神木くんの役、『バグマン。』や『るろうに剣心』で共演していて、最近ではポケモンのCMも一緒に出ていて、神木くんの相棒感が強い佐藤健がこれまでに演じてきた役の要素がかなりあったように感じました。
職業が自動車整備士・・・『8年越しの花嫁』で佐藤健の職業も自動車整備士。
少しこじつけかもしれませんが、主題歌も『るろうに剣心』シリーズでずっと担当していたONE OK ROCKですし。
勝手な妄想ですが、神木くんの役、佐藤健が演じてても何の違和感もないんだろうなと感じました。でもそれだと意外性が何もないか。
るろ剣で殺し合いをした翌年には一緒にマンガ描いてて何だか笑いました
◎修羅の国、ニッポン
ネタバレなしの程度の不満点を挙げるとするならば、まず真っ先に出てくるのは、人が透けすぎ。
話の都合上仕方ないとは言え、主人公の周りに死が蔓延しすぎてて違和感しかありませんでした。
舞台は日本のようですが、自分が住んでいる国はそこまで常に死と隣り合わせの感覚はありません。日本によく似た全く別の国の話ということにして無理やり納得させましょう。
また、自動車整備場の社長(時任三郎)が木山(神木くん)を2号店の店長を任命した、まではいいのですが、2号店の従業員が店長一人だけで他に店員が誰もいない超絶ブラックっぷりには乾いた笑いしか出ませんでしたね。
どんなに小さい整備場でも一人じゃ絶対店回らないでしょ。本店には他にもいっぱい従業員いたのに、誰も連れてこれないとは。。金田(志尊淳)を再雇用できなかったら過労で店長でやばかったよ。客の車少し乗り回した金田の悪行の方がよっぽど可愛く見えるよ、社長。
他にも、宇津井(DAIGO)と真理子(松井愛莉)周りの話も自業自得感が強くて、木山(神木くん)の気持ちが理解できなかったなあ。
真理子は自分がデートに行くかどうかすら他人に決めてもらう、いわば「自分で選択する」行為を放棄している人間。運命など存在しないならば、自分で選択するしか生きる方法はないわけで、それができない人間は、他人に弄ばれてどうなろうが同情の余地はないかなあ。
宇津井に関しても、(詳細は省きますが)その行為を「自分で選択」した結果なわけで…
この二人の因果は何だか「そりゃあそうなるわ」以外の感想が浮かびませんでした…
まあしかし、こんなのは可愛いものです。本作最大の問題はラストシーンで…
+++以下、ネタバレ注意!+++
【ネタバレあり感想、ツッコミ】
本作のラストは以下のような感じでしたね。
終盤、再び葵(有村架純)の身体が透けてきたことに気づく木山(神木くん)。
※以下、役名ではなく役者名で記述します
→他に透けている人を探ってみると、どうやら有村架純が仕事で朝番の時に乗っている電車が何らかの事故を起こすっぽいことが判明。(駅に向かう人がみんな透けていた)
→その電車に乗らせないために二人で旅行を行こうと神木くん画策。(しかし次に誰かの運命を変えてしまうと自分が死んでしまう為、旅行に行くというのは嘘)
→しかし旅行当日、有村架純は旅行を断り仕事に行く為、該当の電車に乗ってしまう。神木くんは幼稚園児に声をかけた事案で警察に追われながらも何とか次の駅で待ち伏せ。体を張って事故直前でその電車を止めますが、多くの人の運命を変えてしまった為神木くんは即死。有村架純は泣きながらその亡骸を抱きかかえる…
的なラストだったと思います。
頑張って電車止めてました
色々ツッコミどころはありますが、まあ納得できる物語の畳み方だったと思います。次のシーンを見るまでは。
なんとなんと、実は有村架純も「フォルトゥナの瞳」の持ち主だった、ということが判明します。
ということで、実は有村架純も神木くんが透けているのを分かっていたので、彼を死なせない為に予定通りその電車に乗った…というのが彼女の真意でした。
本来ならそこで二人の愛の深さ(?)を知り感動するところだと思いますが、彼女もフォルトゥナの瞳の所持者ということを加味すると、先述の電車のシーンに関してある疑問が生じます。
まず二人の目的と結果を整理してみましょう。
◉ 神木くん
・目的→有村架純が透けてきたので命を救う ※自分が透けているかは分からない
・当初の予定→彼女と旅行に行くふり(該当の電車に乗らせない)をして、運命を変えて自分が死ぬ
・結果→彼女が該当の電車に乗ってしまったので、電車を無理やり止めた。結果、乗客全員の命を救ったが、彼女含め大勢の運命を変えたので、その代償で死亡
◉有村架純
・目的→神木くんが透けてきたので命を救う ※自分が透けていることも知っている
・当初の予定→旅行は行かずに予定通りの行動をして、自分が死ねば、彼は運命を変えないので死なずに済む
・結果→予定通り電車は乗ったが、彼が電車を無理やり止めたので自分の命は助かったが、神木くんは死なせてしまった
ここで疑問が生じるのは有村架純の当初の予定です。予定通りの行動をしたら神木くんを救えるのは十分に理解できます。しかし、彼女はフォルトゥナの瞳の所持者なので、彼含め、死にゆく人の体が透けているのを判別できるのです。つまり、彼女は電車の乗客全員が透けているのを知っていたわけです。(しかも死ぬ直前ならほぼほぼ透けていると思う) それを知りながら彼女は電車の乗客を全員見殺しにしようとした、ということになりませんか…?
そして、その回避方法は簡単に思いつきます。有村架純が意地でもその電車を止めればいいのです。しかも、その行為をすることによって自分は死ぬことになったとしても、神木くんは運命を変えたことにはならないので、彼は死なずに済み、彼女の目的も達成することになるのです。
電車の乗客全員がほぼ透けているというどう考えても異常な光景を目の当たりにすれば、常人の発想であれば電車を止めるということに尽力すると思いますが、彼女はそれをせずに、自分は愚か電車の乗客全てを犠牲にして神木くんを救おうとしたのです。電車の乗客を犠牲にせずとも神木くんを救うという選択肢があったにも関わらずに。。
神木くんの当初の予定でも電車の乗客全員は救うつもりはなかったじゃん、というツッコミもありますが、彼は前もって保育園に電話して遠足を延期するよう忠告したシーンもあり、彼女とは違い決して何もしなかったわけではありません。
また、実は神木くんと有村架純は同じ飛行機事故の生存者同士でたまたま再開した、ということも同時に明かされます。(それで同じく彼女も瞳の能力を持つようになった) どう考えても無理があるだろというツッコミは置いておくにしても、飛行機事故→化学工場爆発→電車事故と立て続けに死の局面に立ち会い続けている有村架純、どんな死神っぷりだよ!といいうツッコミはせずにはいられないよもう…(笑)
そもそも、彼女がフォルトゥナの瞳の所持者という設定必要だったのかなぁ。神木くんを意味深に見つめていたり、両親の影が全くないという伏線はありましたが…
彼女が瞳の所持者じゃないと神木くんが死ぬかを分からないので、普通に旅行に行ってしまうという映画のストーリー上の都合ならありますが。
つまるところ、映画の都合上によって仕立てられた悲しい死神・有村架純ということだったのでしょう……
本作のポスターに書いてあった「その選択にあなたは涙する」というキャッチコピー。
うん、別の意味で泣けました。
この結末はなぁ…
・連想した作品
二人が以前共演していた作品。地味だし長いけど、好きな映画です。
彼女を救うために頑張りすぎる映画繋がり